銀ナノ粒子
通常銀の粒子のサイズ、粒径が1[nm]~100[nm]のものを銀ナノ粒子という。
粒径が小さいほどナノ粒子の特性が現れてくる。銀の粒子を構成している内部原子と表面原子の物性は違い、粒径が小さくなるほど表面原子の割合は大きくなる。粒径が100[nm]以上の大きさだと表面原子の物性は無視できるものだが、100[nm]以上の大きさだと表面原子の物性が徐々に表れれ、10[nm]以下だと顕著になる。
ナノ粒子の特性として知られているものとして主に次の2つの特性がある。
- 融点降下
- 金属ナノ粒子は、粒子サイズが小さくなればなるほど、見かけの融点が大きく下がる。
- 量子サイズ効果
- 金属ナノ粒子の粒径が小さくなるほど、電子漏れだしなどの量子効果が強くなり、触媒等の特性が表れる。
銀ナノ粒子の作成法
ブレークダウン法
粉砕法など物理的に細かく砕く方法。この方法で得られる微粒子は、その粒径分布が大きい。また、二次凝集[1]を伴うため数[nm]程度の銀ナノ粒子を得ることは困難で、セラミックだと粒径20[nm]、銀粒子だと3µ程度が限界。
[1]粉が細かくなるとくっつく力が働く。そのため、細かい粉になった時粉どうしがくっつく(凝集)。これを二次凝集という。
ビルトアップ法
銀ナノ粒子を原子状態やイオン等から作り上げる。主に次の3つの方法が知られている。
1) 真空/気相中での合成:林プロジェクト法
真空、低圧の希ガス中に蒸発させた金属ガスを衝突させてナノ粒子を作成する。
- 長所
- 結晶化度が高く、純度が高い銀ナノ粒子が得られる。
- 短所
- 大掛かりで高価な真空装置が必要。歩留まりが悪く、コストが高い。また、通常では凝集状態にあるため何らかの凝集防止策を講じなくてはならないなど量産実用化には課題が多い。
2) 水系/液相中での合成:Faraday法 ブラスト法
水中で銀イオンを還元して銀コロイドを形成する方法。
- 長所
- 銀ナノ粒子の作成方法としては最も簡便なものの一つ。
- 短所
- 反応溶液が水なので、安定に取り出すために強い分散化安定剤を別途用いるなど工夫が必要である。分散化安定剤として硫黄化合物や窒素化合物が使用されるため、300度以上の熱分解をもつ保護基でないと作れない。また、希薄溶液でないと作れないので大規模なタンクが必要なため、工業的に応用するのは困難である。
3) 非水系/液相中での合成;有機金属熱分解法(当社特許技術)
有機金属熱分解法には次の2つの製造方法がある。
① 有機銀化合物熱分解法
脂肪酸銀塩を熱分解して銀ナノ粒子を作成する方法。
② リカンドチェンジ法
銀塩を熱分解する際に保護基を共存させることにより、銀コアを囲む保護基を銀塩を構成する低分子の保護基と交換し、安定な複合銀ナノ粒子を得る方法。
「有機銀化合物熱分解法」では、作成できないナノ粒子が作成できる。
- 長所
-
結合力が弱い脂肪酸や高級アルコールで薄く均一に被膜された銀ナノ粒子が溶媒中[2]に高濃度[3]で安定分散でき、凝集・融着の問題もない。銀ナノ粒子を㎏単位で量産でき、天然由来のものを使っているため環境に優しい。装置も簡単なものでできるので、従来の製造方法に比べて製造コストがかからない。
[2]①法では、溶媒は脂肪酸銀塩そのもの。脂肪酸銀塩は、和ろうそくが溶けたものとほとんど同じ。②法では、溶媒は高級アルコール。口紅などと同じ成分。
[3]2[L]の反応機で500[g]